「『ひなた』について、」製作・運営委員会 2010-2019 

DIGRESSIONS〈2〉 「10代の甘い髪の香り_」  徒爾の論証 (「DANDY」No.122)

走行中のバス車内を舞台とするAVでは、本作に限らず「劇用車」と云われるレンタル車両が頻繁に使用されている。実際の路線バス退役車両を扱う専門レンタル業者より調達、公道上での撮影を遂行することで、走行時の不規則な振動による映像の揺らぎや移う景象、並走する車の騒音の拾得等、セット撮影では実現し得ない実車両ゆえの臨場感が生成される。車内には〈まど上広告〉も掲示され、外観も所有会社の手により現役路線車両を彷彿とさせる塗装が新たに施されており、この劇用車を以て、実在の停留所でロケを行うバスの発着カット、乗客役俳優の乗降シーンも違和感なく撮影することが可能となる。「DANDY」を始め、系列メーカーの「ナチュラル・ハイ」「ハンター」「アキノリ」といったSOD(ソフト・オン・デマンド)傘下レーベル作品に於いても、本作と同時期に発売された多数作品で同一車両を確認することができる。また同車両はAV撮影のみならず、車体に番組名等をあしらったラッピングを施すなどして、テレビのバラエティ企画へも度々登場している。

AVメーカー「DANDY」作品「10代の甘い髪の香りは勃起薬!満員状態で正面から股間と股間を擦りつけたらヤられるか? VOL.1」は全5編のうち2編が日中、3編が日没後の撮影であるが、複数チャプターで乗客役に数人の同一人物が視認できる。エキストラとして手配・派遣されたであろう、老若男女様々な世代の混成からなるこの乗客達は、挿話ごとに乗車場所の変更こそあれ各人の服装も同じであることから、全編が同日撮影されたものとみて間違いないだろう。

バス走行ルートはシリーズ作品の撮影毎に多様だが、都心巡回を基本とし、当サイト「LOCATIONS」項に記した本作のひなた編の推定走行路、加えてその中央部を東西に横断する方南通り、南北を縦断する中野通り等の都道が、上述した系列レーベル作品での主たる撮影走路として確認されている。
シリーズ作品中、タイトルに「田舎の~」と前置された作品では、相応な田園風景を求めて遠方ロケも実施されているが、さしたる必然性も感じられぬまま唐突に郊外へ向うケース(DANDY-238・chapter4:新座市ロケ)も見受けられる。走行路決定がドライバーに一任されているか否かは知る術もないが、同日撮影であるならば随行ドライバーも1名派遣と思われるものの、本作もバス走行路は各編で必ずしも同一コースの反復とはなっていない。

 

その中にあって前掲したSOD系列作品でバスを扱った作品中、ひとつの偏向として挙げられるのが顕著に登場する代々木公園周辺に撮影地を据えるものである。女優の乗車シーンで登場するバス停留所は、京王バスの「宿51」路線、あるいは同公園内を東西に横断するかたちの都道413線を走路とする渋谷区コミュニティバス「代々木公園」(DANDY-099)、「原宿駅入口」(DANDY-121)停留所等を撮影地とすることが多く、至近にある代々木国立競技場の特徴的な尖塔部もしばしば作品に映り込んでいる。またDANDY-190、309等で見られるような、出演女優によるバス乗車前の公園内散策シークエンスが設けられる作品もある。

本作「10代の_」でも、チャプター3の結尾で女優・上原ひなが下車するのは「代々木神園町」バス停付近の路上であり、これらの事象から撮影時のスタッフ集合場所、若しくは撮影チームの詰所的な拠点として同公園が設定されている可能性もあるだろう。しかし本編開始・終結シーンは、前述の「宿51」路線「十二社池の下」停留所などにも場所を変え行われており、こちらも推測の域を出るものではない。

 

ひなた編序盤、バスに揺られる彼女を背後から円滑なティルトダウンで滑降し、足許まで到達したカメラは、慮外にもそこから視点を真上に向け制服のスカート奥へと侵入上昇する。これは挿話内に於ける平時の終了を告げる句読点として、さらには背後に屹立する男によって直後に齎される蹂躙行為の開始を宣する表徴ショットとして、本作各編のみならず系列作品にみられる儀礼的フォルムである。このワンカットからなる滑らかな視点移動、あるいは座席シート上に立ち昇って撮影したと思われる演者を直下に俯瞰するショット(チャプター3)等で得られる広範な機動性は、AV撮影機材の主流たる軽量カメラの成せる所為だろう。

「DANDY」の看護士作品等に見られる多面的な異アングルカット(据置カメラによる定点ショット)もバスを舞台とする作品では存在しないことから、カット割りの連続からなるシークエンスの一塊は、各パートをアングルごとに一括撮影した後に序列組替を施すパズル的縫合によるものではなく、上述の精良な敏捷性を持つカメラによって、ほぼシナリオ進行に準拠して撮影されたものだろう。※注1)

 

これはミドルショットからアップへと跨ぐカット繋ぎの一部で、背後に立つエキストラの挙動に、双方のショットで連続性が維持されていることからも裏打ちされる。もとより走行中の車内という足許の不安定さに加え、多数のエキストラを配した車中では複数の撮影者が同乗すること自体が困難であり、単一のビデオカメラで多数のアングル獲得を担うことが不可避となるだろう。
映画やドラマではシーンの撮影順序は必ずしもストーリー上の事象の流れに沿うものではないが、その結果として一連のシークエンスでありながらショット同士のモンタージュによる撮影時期の逆転から、時系列の連続性に繋がりを欠く例は枚挙に暇がない。ひなたの作品「鉄道と少女」の温泉旅館でのシークエンス冒頭に於いても、モンタージュによって一連の事象にあからさまな不整合が生じている。少なくとも異なる3テイクの包有からなるこの情交シークエンスは、ワンシーンとして継がれているにも関わらず、細かなショットの積み重ねの中でカット毎に脈絡を欠く衣服の違いや髪型の変化を露にする〈繋がらないショット〉の連繋となる。

※注1)大勢のエキストラを配した窮屈な空間での撮影であることから、撮影者は一人との心証であったが、くりかえし当該シーンをみてゆくと、こう結論付けるのは早計であるとの疑念が生じる。この劇用車バスには中央部の昇降口脇に車掌スペースが設けられており(バス乗務員が二人制だった頃の名残)、そこをカメラポジションとしたと思われるショットが頻出し、車両後部からのカメラアングルとのショットとの切り返しが顕著であることが判る。走行中車内という撮影環境から推して、2機のカメラ使用による同時撮影がはるかに効率的であり、「ひなた編」に於いては、女優の向きが180度変わる後半部で車掌スペースカメラがローアングルポジション専任へと移行、バス後方アングルとの切り返しを行ったとも考えられる。

上:DANDY-099、下:DANDY-121より、女優・翔田千里と若葉のバス乗車シーン。

それぞれ渋谷コミュニティバス「代々木公園」「原宿駅入り口」停留所での撮影である。