「『ひなた』について、」製作・運営委員会 2010-2019 

「完全ガチ交渉!噂の、素人激カワ看板娘を狙え!Vol.11」

YRH-042 2014/04/22

CRITICISMS 論攷

Copyright ©2011 PRESTIGE Co.Ltd. All Rights Reserved.

■蠱惑と代償

近年多数メーカーが量産する「シチュエーションAV」ともいうべき、限局された状況下で発生する事象を時系に沿って描写するドラマ作品の中で、撮影地として既存の商業施設・店舗を借用してロケが行われるものが数多く見受けられるようになっている。 病院や教室、コンビニや通勤電車の車内に至るまで、実物と見紛うほどのクオリティを持つ現在のロケスタジオの充実ぶりには瞠目すべきものがあるとはいえ、コンテンツ製作に於ける消費者への訴求点模索は常に新境地へと開展し、日々量産される作品の飽和的状況とも相まって、マンネリズムを打開すべくより一層多面性を有するものへと伸張してゆく。

AVに度々登場する巧緻な舞台装置として、ひなたの出演作であるDANDY作品「10代の甘い髪の香り〜」に見られるような退役バス車両使用による撮影や、実際の宿泊施設を前身とした温泉旅館スタジオ、果ては走行中の電車内での奇襲撮影と思われるロケなども挙げられるが、職業女性を題材に取る作品ではその勤務場面を描写する手段として、ストーリーに見合う実在店舗が選定され、主演者の同僚や来訪客に扮したエキストラを配するなど、極めて写実的な現場設営がなされている。
成り行きは荒唐無稽であっても作品の佳局である陵辱描写の対比として、導入部で女優が醸す楚々とした仮象提示は、後続する隷従へのプロセス表象に極めて効果的であり、一心に業務に従事する彼女らの真摯な姿を描くことで、作品の極点に於ける形姿との隔りを明確に表象する。

加えて「本物の店内ロケ」に執心することで生産される現実性の獲得によって、視聴者の高揚感亢進に一層の誘引作用を齎すものである。
本作品「完全ガチ交渉!噂の、素人激カワ看板娘を狙え!vol.11」は、5編のオムニバスから成るが、ターゲットとなる女性は全てが飲食店勤務の設定となっており、各女優がそれぞれ異なる職場で立ち働く姿が冒頭部に素描される。 しかし、森山茜出演編を含む本作の幾つかの挿話では、上述したような就労中のシーンが殆ど描かれず、店頭で仕掛人達との映像作品出演交渉(作品内ではウェブサイト上の動画コンテンツへの出演依頼という大義名分がある)シーンが挿入されるに留まる。後半部では勤務先から離れ自宅(とされた場所)やシティホテルへ場所を移動するため、これらのチャプターではタイトルから想起される場違いな仕事場での情交場面や、業務用ユニフォームを纏ったままでのコスチューム・プレイといった、現実には容易に達成し得ない、幻想的・非日常的行為は全く描かれることがない。二人目のBAR店員、三人目のコンビニ店員の2編が「店内+制服(仕事着)での情交」を兼備するものの、「看板娘」と銘打ちながらも収録編の半数以上でその主題性を欠き、作品の創意は希薄で凡庸なナンパ物作品の域を出ないものとなる。

また「完全ガチ交渉!噂の、素人激カワ看板娘を狙え!」シリーズは、その前身となる「街で噂の、ウブな看板娘を狙え!」からの慣例として、毎回「in ○○」と舞台となる特定地域を謳っているものの、必ずしも当該地での撮影が行われてはいない。

本作に於ける各チャプター撮影場所は、一人目の中華料理店が中野区、二人目と四人目のBARとカフェが港区(2チャプターで同一店舗を使用)、三人目のコンビニエンス・ストアが大田区であり、森山茜の出演チャプターも港区(先述の2チャプター併用店舗とは別)での店舗ロケが行われている。

現在ではドラマや映画、写真撮影の為のロケ地仲介業務も存在し、飲食店を主とする実際に稼働中の商業施設や、一時的に空家となった一般家屋・マンション住居区画などが混在して借地登録され提供される。撮影条件に合致する物件検索が容易であり、そこでの数ある登録場所もロケ地探索時の選択肢となりうるものの、借地条件として持ち主が撮影内容に制限を設け、登録地の全てがアダルト作品に門戸を開いているわけではない。
AVでの撮影場所借用の交渉仔細は計りがたいが、公共施設でのAV撮影使用の発覚から施設の管理担当者が処分される事例などもあり、「アダルト作品撮影」という条件下でのロケ地所有者の承諾獲得の煩雑さを推察すれば、限定された地域での適切な「店舗」ロケ地確保は容易ではなく、本作のように撮影が許諾された、設定地域と異なる場所での撮影措置や店舗外での性交シーン撮影が採択されるものと思われる。

本シリーズも含めた系列レーベル作品、「街角美少女〜」「働く女(猟り)」「DOC」等での「素人交渉」作品では、仕掛人と女優扮する「素人娘」との談判シーンにあって、女優の頑な拒絶や抗いが描かれることが殆どない。

「素人娘」を懐柔する手段は専ら「謝礼」と称した現金であるが、女優は仕掛人が目論む奸計にたやすく陥り、仕掛人が報酬の上乗せを仄めかせると僅かな逡巡を見せつつも手もなく指示に応じてゆく。自宅やホテルに場を移して交渉人と対坐し、こともなげに要求を呑む彼女らの表情はむしろ快活でさえあり、背徳感や疚しさを装うような演出は見られない。 こうした傾向は他メーカー作品でも顕著に見られるものであるが、一方で本作と同一カテゴリに区分される作品でも、昨今のAV長尺化にあわせて情交に及ぶ過程、主役の心理変化を委細に描写してゆく作品も存在する。隷従へのプロセス簡素化は、忍従へ向かう過程を演技力に乏しいAV女優に演じさせることのもどかしさを端から放棄し、中核である情交場面に注力する意図によるものであろうか。
 

本作で森山演じる「あやせゆうこ」は、具体的な金額は明かされないものの「現行給与額の3倍」という法外な謝礼金を提示され俄かに色めき立つ。この過大な謝礼額ゆえ、彼女はひとりの男優のみならず、やがて現れる複数名の闖入者への厚遇をも強いられることになるが、報酬認容の時点で自らが来訪者に供与すべき、対価に相応する代償、直後の受難を諦念したとも解釈も出来るだろう。しかし、あくまで「素人」を口説き落とす、という主題下でのドキュメント的描出に期待する視聴者にとっては、交渉経過が円滑すぎて安直感を禁じえず、登場女性の恥じらいや初々しさを享受叶わずに落胆を覚えることになる。